最近ふと怪物事変読み返して花楓くんかわいいなあ~ということを思い出したので書き留めておこうと思います。
花楓、拗らせおじさんの脳を焼く習性があるのか、名無しの拗らせおじさんである「おっちゃん」、潔癖症で強迫観念持ちの「赤城」の脳をコゲコゲに焼いてしまったわけだけれども(若き拗らせ人の雰囲気がある鋼太郎も微妙に……)、脳を焼くと同時に花楓自身も影響を受けて右往左往しているところがカワイイんだよね。特に「おっちゃん」はだいぶ花楓に爪痕を残している。
そもそも、「花楓」って名前自体が「おっちゃん」の名づけじゃないかとうたがってるところがある。花楓の母親は花楓を生んですぐに死んでしまったということなので、名前を付ける、以前から考えていた名前を教えるだけの時間もなかったんじゃないか。
そして「花楓」という字面からただよう教養が……「かえで」なら「楓」の一文字でいいところをわざわざ「花」をつけたのは花楓の尾っぽの付け根にある(人型のときは髪になっている)赤と橙の飾り毛を表現してのことじゃないかなあ、とか。「おっちゃん」はなんか夢追い人のロマンチストな雰囲気があるのでそういう名付けしそ~! っていう偏見がある。
あとは「花楓」の字面が複雑なので、言葉もわからなかった時代の花楓が母親から教えられたけどその後呼ばれることもなかった名前を覚えていられるものだろうか……? というのもある。
母親からは「かえで」という名前を音で与えられて、「おっちゃん」に「花楓」という字を与えられたということもあるかも。
あと花楓に「無視されるのが一番嫌い」というのを植え付けたのも「おっちゃん」なんだろうな……っていう。「おっちゃん」は花楓に夢中だったとのことなので、たぶん山にいたあいだはずっと花楓にかまい、すごいと褒めて、いろんなことを教えてくれて、花楓を「退屈」させなかっただろうと。それは母親を亡くして以来ひとりぼっちの花楓にとってすごくうれしくて楽しいことだったのだろうなと。
それがあの「とってきた! いっしょにたべよ!」から一気に、完全に崩壊したんだろうな。「おっちゃん」はもう花楓に合わせる顔がないし、でも花楓にそれを説明することもできないし、花楓は理解できない。「おっちゃん」はせっかく持ってきた食べ物を一緒に食べてくれないし、(たぶん)花楓が「じゃあいいよ、おれひとりでたべちゃうもんね」しても拒絶するし、まだ食べられるのに土に埋めてしまうし、もう花楓にかまうことも褒めることも教えてくれることもなくなって、完全に花楓を「無視」する状態になってしまったんだろうね。花楓の性格上、脅したり問い詰めたりしたと思うんだけど、「おっちゃん」からするともう「殺してくれ」だし「許してくれ」でしかないんだよね。
このタイミングで花楓は野火丸に誘われて捜査特課に入るわけだけど、それでも無視に対する激しい忌避感、あと「よくわからないが自分の失敗で誰かに無視される」ことへの恐怖みたいなのが底の底に存在するままになっちゃってるんだよね。赤城曰くの「明るく人懐っこいが誰にも興味がない」というのも、誰かに傾倒しすぎるとイヤなことになるから、「退屈」しない程度に距離をとろう、みたいな防衛反応なのかも。
「おっちゃん」の人物像はたぶん大学在籍の学者だろうということ、年齢的には30代前後? ではないかと思っているんだけど。大学院生って可能性も考えたけどそれだと猟師三人ともなって、ほかの研究者等のツレはなしでフィールドワークっていうのも考えにくいっていうか……野火丸と対話したときのヨボヨボな感じは家族友人が自分のせいで花楓に殺されたことに対するショックと自暴自棄による緩慢な自殺行為によって衰弱している表現かなと思うんだけど、さすがに20代くらいだったらあそこまでヨボヨボにならん気もするので。まあ30歳前後って言うと赤城ともろかぶりで、花楓はこの世代の拗らせおじさんに特効あるんすか? みたいな気持ちになるよね。
性格としてはなんかちょっと浮世離れしたというかふわふわした夢見がちなところありそうだな……って感じるんだよね。デッケエ獣が人間を三人パクパクしちゃったところを見ているのに、嘘つくのもヤバいし、「また会いたい!」ってなって会いに行くのもヤバいよね。そんで人としての生活捨てて何年も暮らすっていうのもヤバい。花楓と交流を持つってだけだったら、人としての生活をある程度維持しつつ、時間を作って山に行くとかもできたじゃん。でもこいつ山に住んでるからね。手塚治虫の「ブッダ」に出てくるナラダッタかよみたいな恰好でよ。服は着てるけど。
これはちょっと飛躍した妄想だけど、「おっちゃん」はいわゆる人間があまり好きじゃなくて自然や野生を過度に神聖視してしまうタイプの人間だったんじゃないかな。いきなり山で暮らすとかかなりぶっ飛んでるしね。人間は汚い、動物は清らか、みたいな感じ。だから花楓を野火丸に託す? のもためらわなかったんじゃないかな。
実際には野火丸(というか飯生)は花楓を戦力・武力として欲したわけで、それは「おっちゃん」が花楓に悪口を吹き込んで意図しなかったとはいえ家族と友人の殺害を促してしまったのと同じようなことを、意図的にやろうとしていたわけでつまりは余計に悪い環境になるわけで、花楓が大事なら絶対に止めるべきだったんだよね。「おっちゃん」が花楓を御すことができない状況で連れていかれることを止められないにしても促すべきではなかった。そういうところも甘くてぬるくてどうしようもないおっちゃんなのかい?
鋼太郎も「おっちゃん」と同じく「人よりも動物が好き」なタイプだけど、「人が社会を作り支配している以上、人の秩序にある程度従うことが必要だし、そうさせないことは動物の不利益になる」というような現実的な考えができるから明らかに異なるよね。鋼太郎は「おっちゃん」のような人が嫌いかも。結局は我欲で動物たちに不利益をもたらすタイプの人間だからね。
花楓くんカワイイ~を語ろうとしたら名無しモブ拗らせおっちゃんの話になってしまったけど、花楓くんのかわいさを語るうえでおっちゃんの話は欠かせないんで……。