本誌ネタバレなので下げるね。一日に二回も更新してしまったけど、基本このブログはゆるゆるのんべんだらりで行く予定。
いや~ヒャクノスケヤマネコ……(尾形百之助のことをわたしはこう呼ぶ)、嘘へたくそか!? というのがヤバいんですけど。谷垣に言えたもんじゃない。かなりマジで思ってるんだね、みんな俺と同じはずだって。しかしあんこう鍋が好物のやつっておまえとおまえの血縁上のおやじくらいじゃない? そんなメジャーじゃないよ。トメって名前……そればあちゃんの名前じゃない!? 母ちゃんの名前? あれはヒャクノスケヤマネコの願望なんだろうか。彼は死ぬときはだれかに手を取られてあんこう鍋を食ってから死にたいのかな。
ちょっと今回の話のヒャクノスケヤマネコはもう嘘つけねえならだまっとけみたいなレベルであれなんだけど、勇尾あまりにも大勝利じゃないか? 勇尾というか尾勇も大勝利だよね、勇作さんとヒャクノスケヤマネコの関係性に萌えていたひとびとが大勝利だよ。なんてったってヒャクノスケヤマネコはずっと勇作さんのことを引きずって生きてたんだよ。根に持つタイプじゃねえなんてめちゃくちゃ嘘じゃん。アイヌの偶像も高潔なのかとかおまえらみたいなやつがいていいはずがないとか、めちゃくちゃ勇作さんを引きずってるじゃん。
あとヒャクノスケヤマネコの思い描く杉元の死の場面があまりに潤色がすぎて、ヒャクノスケヤマネコが信用できない語り手である可能性も急浮上してる。もしかしたら鶴見中尉は膝を撫でてないかもしれないし、勇作さんもそこまでまとわりついてなかったのかも。いや、冗談ですけど。
あといまさらだけど、月島軍曹が死の淵で思い浮かべたのが「だすけん基ちゃんはみんなに嫌われたっちゃね」と「死んでいった同胞たちのためにも狂ったように走り続けるぞ」で、ヒャクノスケヤマネコは「寒くありませんか兄様」であり寄り添ってくる勇作さんの亡霊なんだよな……と思うとヤバい。現在のヒャクノスケヤマネコは勇作さんとの思い出でできている。
しかし思うのは、ヒャクノスケヤマネコは母親を自分の意志で殺してしまったときから後戻りできなくなったのではないかってこと。幼いヒャクノスケヤマネコはよかれと思って母親を殺したけれども、それも「みんな俺と同じはずだ」という信念に基づいた殺しで、それを否定することができないから、勇作さんも殺さざるを得ないし、いまもアシㇼパを殺そうとしているんじゃないかってこと。勇作さんやアシㇼパや杉元のような、自分とちがう人間の存在を認めてしまったら、「母は死にたくなかったんじゃないか」という仮説が成り立ってしまう。たぶん「母は死んででも父に会いたかったはず(なぜなら自分だったらそう思うから)」という理由で殺したと思うんだけど、それが間違いだった可能性が生まれてしまう。ヒャクノスケヤマネコはそれに耐えられないんじゃないか。なにせ、殺して後悔したことなんてないんだから。
わたしはヒャクノスケヤマネコが勇作さんを殺したのは、いずれ自分を理解したときに拒絶されると思ったからかなあと思って「死んでも~」を書いたんだけど、ちがったね、そもそも勇作さんという存在そのものが、ヒャクノスケヤマネコの考えを根本から突き崩す存在だったんだ。勇作さんが「ひとを殺して罪悪感がない人間などこの世にいていいはずがない」といったように、ヒャクノスケヤマネコは「俺とちがう人間などこの世にいていいはずがない」と思ってるんだ。でも勇作さんが自分とちがう人間だったってことはうすうす感づいてるよなさすがに……だから引きずってんだと思うけど。
ラストの背後に杉元がいるので、次週はたぶんヒャクノスケヤマネコぼこにされると思うんだけれども、個人的には死なないだろうなあと思う……いや死んでもいいけど。推しの死を喜ぶタイプの人間なので、わたし。でも、物語的に、父を殺されたアシㇼパでさえ拒絶したヒャクノスケヤマネコ殺しを杉元がやってしまったら、ふたりは再会できても、もうかみ合わないと思うんだよね。杉元のヒャクノスケヤマネコ殺しをアシㇼパが飲み込んでしまったら、今回の「わたしは殺さない」が台無しになってしまう。杉元とアシㇼパの訣別をえがくならあり……かもしれないけど、その場合再統合がかぎりなく無理めになってしまう感じがある。
まあ、待て次週! って感じですかね。