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萌え話:人喰いの大鷲トリコ

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萌え話:人喰いの大鷲トリコ

正月からずっとプレイしていた。いやーずっとプレイしたいと思ってたんだけど、なんでプレイしなかったんだろうね? カメラワークが悪くて画面酔いするとかいう評判を読んだからだった気がする。やってみたところカメラワークはたしかに悪いところもあったけれどもまあ画面酔いするほどではなかった。そしてスゲエ……いいゲームだったんだよな……というわけでネタバレ感想行きます。



トリコにやるあのタル、塔のてっぺんでのイベントみてすぐは「え、中身人間なん? 上田エグない????」とめちゃめちゃビビったんだけど、よく考えたらあのタルの中身ってツボに入ってたりで道中にも転がってて、蝶々がたかるような物質なので、おそらく人間そのものではないんだろうなーと思う。たぶん人間のからだをエネルギーとして必要としているのは「谷の意志」および谷の意志によって動かされている装置やヨロイたちで、トリコたちには人間を持ってくる代わりにあの液体をあげるシステムになっているんじゃないかな。
 そしてトリコたちが飲み込むとからだに文様が浮かび上がってヨロイや「谷の意志」による謎の文字攻撃で動けなくなったりするので、トリコたちの役目は人間をいったん飲み込んであの文様を刻み、谷まで運ぶことなのだろうな。ああすることでエネルギー変換しやすくなったりするのでしょう、たぶん。でも、谷の外の人間たちはそんなことを知らないから、いわば鵜飼いの鵜でしかないトリコたちが人間を飲み込むところをみて、大鷲が人を喰っているんだと解釈したんだろうね。でも実際、トリコは少年と初対面のときにおなかぺこぺこだったり、その後も道中で空腹になったりするけど、少年を食べようとはしない。装置にあやつられて飲み込むことはあったけどすぐ吐き出している。よって、トリコたちはほんとうは人喰いの性質を持たないんでしょう。

 でも、トリコたちがどういう存在なのかという点についてはいろいろ考えられるよね。もともといた生物が、あの谷をつくった何者かによって改造されたのか、それともあの谷をつくった何者かによって、トリコたちもつくられた存在なのか。翼があってかぎづめがあって大きな耳があって鼻と口があってという鳥類と哺乳類をごちゃまぜにした、キメラみたいなトリコはいったい何なのか。ゲーム開始時に実在の生物(虫とか動物とか)と、想像上の生き物(ユニコーンとかフェニックスとか)と怪物(ハーピーとか)が古いタッチで描かれたものがしめされるんだけど、そのなかにトリコもいるんだよね。トリコは想像上の生き物と怪物のはざまにいるような感じの造形をしている。
 「谷の意志」や装置からなにかを受信しているツノや、いかづちを放つしっぽのことを考えると、少なくともこの部分はひとの手が加わっているとみて間違いないと思う。

 少年と行動をともにするトリコは、村を襲って少年をさらい、いかづちに打たれて墜落し、仮面を半分失うんだけど、ヨロイによって運ばれて首輪をつけられているんだよね。あれはおそらくダメージを負い、仮面とツノを失ったことで制御がむずかしくなったトリコの療養のためなんだと思う。回復すればまた仮面をつけて人喰いのトリコとして谷の外へ出す。でもそのあいだに、トリコはまだ文様が中途半端にしか刻まれていない少年を吐き出し、その少年がトリコから首輪と残った仮面を外した。だから「谷の意志」はこのトリコを完全には支配できなくなった。装置によって一時的に支配して、少年を飲み込ませることはできるんだけど、そのたびトリコは洗脳にあらがって少年を吐き出している。そのたびに文様が濃くなり、広がっていくけど、少年はほかのトリコたちが石像に吐き出す繭のような状態にはならなかった。最初吐き出されたときは同じような液体? で覆われてはいるんだけど、すぐにぱちんとはじけてやぶれるような脆さ。このトリコはもう「谷の意志」のために餌をあつめる鵜飼いの鵜ではなくなってしまった。
 ヨロイはより「谷の意志」に近い存在だからなのか、少年といるトリコを襲ってくるんだけど、仮面のトリコは基本的には同族であるトリコを害さないんだよね。仮面のトリコは少年を狙う、だからトリコが少年を守ろうとして、仮面のトリコと戦うことになるという流れ。塔のてっぺんでも、仮面のないトリコに仮面のトリコたちは「なんや? どうしたんや??」とにおいをかぐような動作をするけど、それは攻撃ではない。でも、少年を守ろうとして暴れだしたトリコには容赦しない。

 少年のこと。少年が村からさらわれたとき、村の代表みたいなひとが「選ばれしもの」というようなことを言っていたので、おそらくトリコは人間とみれば連れていく(村人からすれば食べてしまう)というわけではなくて、ある程度選別するんだろうな。少年も、あんなにたくさん子どもたちが寝ているなかから選ばれたし、トリコの発するなにかに感応してうなされ、目の色が赤く変化するようすもあった。おそらく少年がもつ何らかの性質によって、選ばれたんでしょう。文様が刻みやすいとかエネルギー効率が高いとかそういう理由なのかな。たぶん襲われるのは子どもたちだけで、子どもたちだけが狙われるから、村ではああいうふうに子どもをひとところに集めて守ろうとしていたんじゃないかな。いやでも周囲に大人がいてすぐに気づいてやらないと意味がないけど!!!! あんなでけえもんが飛来したら速攻気づけよ!!!! 物見はいねえのかよ!!!!
 少年に刻まれた文様自体はその後の少年に影響しているようにはみえないので、「谷の意志」が働きかけなければただのタトゥーにすぎないんでしょうね。もしかしたら身体能力向上とかの効果があったかもしれないけど。

 谷のこと。谷にはおそらく超高度な文明があったんじゃないかなあ。ただ、大鷲の持つ性質が洗脳を受けるツノ、破壊するしっぽ(とそれをあやつる鏡)のふたつあるところをみると、谷に住んでいた知的生物はおそらく一枚岩ではなく、対立していた。そして争って双方が滅び、あるじを失ってなお無意味に谷を存続させようとする「谷の意志」とヨロイ、トリコたちが残った。
 もしくは、谷を築き上げた知的生物は自分たちのために「谷の意志」をつくり、トリコたちをつかって人間をさらい、自分たちの文明を繁栄させていたが、やがて「谷の意志」は暴走した。「谷の意志」をおさえるためにトリコのしっぽにいかづちを操る力をあたえ、鏡をつくりだしたが、結局「谷の意志」によって知的生物は滅ぼされてしまい、いまの「谷の意志」はただトリコたちにエネルギー供給をまかせ、谷(「谷の意志」にとっては白い塔だけがすべて)を維持している。
 このへんはあまり語られていないので謎ですな。とりあえず、谷に生きていた知的生物がトリコを使役していたことは間違いない。自分たちの居住区域からは遠ざけておきたいから、目玉模様のガラスをあちこちに配置したんでしょう。トリコが目玉模様を苦手とするのは洗脳なのか本能なのか。あの目玉模様は「谷の意志」の形状となにか関係があるのか。謎ですね~~~~。

 そしてエンディングですね~~。「谷の意志」を破壊したことで、多くのトリコたちが地上へ落ちていく(絶命している?)んだけど、少年とずっといっしょにいたトリコと、そのトリコと戦ってツノが折れ、仮面を剥がれたトリコはとくに影響を受けたふうではないんだよね。少年といっしょにいたトリコはそのまえにリンチを受けているので弱ってしまっているけど。落ちていかなかったトリコの共通点は、ツノが折れたことがあることと、仮面がなかったこと。なので、仮面はツノと同様に洗脳装置として働いていた? そのせいで、「谷の意志」が破壊されたとき、連動して仮面のトリコたちはなんか……悪い影響を受けたんだろう。個人的には生きていてほしいけど、無理だろうな。
 最後にいっしょにいるトリコふたりはこの生き延びたトリコっぽいね。眼だけ光って、ツノは光っていないのはなにか理由があるんだろうか。そして少年とはじめて出会った場所にいるトリコ、少年がまた来ることを信じて待っていたりするのかな。

 このゲームのなにがよかったかというと、やっぱりトリコの「ケモノっぽさ」だと思う。意思疎通ができない生き物。言葉が通じない生き物。でもたまに、心が通じ合っているような錯覚を抱かせる、そういうケモノっぽさがトリコにはあった。やっててめちゃくちゃ上橋菜穂子著の獣の奏者を思い出してしまった。あれは、「人間の社会で動物を生かすということは、人間のエゴで動物を振り回すということ」というシビアな結論にたどり着いていた(気がする)けれども、人喰いの大鷲トリコはそこまでは行きつかなかったね。というかそういう物語ではなかった。異郷の地で出会った生き物とのつかの間の交流だから。
 ラストの少年(もう少年ではないけど)は、トリコは死んだと信じているけど、いつかあの村にトリコが来てくれないかなあと思ってしまう。そういう余韻が残るゲームっていいよね!!! でもふつうにプレイしたらタルの中身人間!?!?!?!? ってなってびっくりするからなんかもっと説明したほうがいいと思いました。

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