カブトというのはNARUTOの薬師カブトのことなんだけど、正確には薬師は偽名で名前はカブトだけなので……という推しに対するこだわり。いや検索するときにあると便利なんだけどね。カブトだけだとほかにいろいろなものが出てきてしまう。蟹とか虫とかライダーとかよ。でも彼はカブト、ただのカブトなんですね。ということをおしていきたい。
カブトのアイデンティティ・モンスターぶりはすごい。なにがすごいかというと、そのためにカブトは恩人であるノノウを見捨てるんですよ。覚えていてくれるはずだったのに、自分を忘れてしまったから。それだけの理由で。それまでカブトは医療忍術を使ってノノウを治療していたのに、わざわざそれをやめてその場を離れているんですよ。この描写はすごいな~と思った。完全なる後付け過去編だけど。「ノノウはもうカブトから受けた傷が非常に重かったので、カブトにも助けることはできなかった……」という描写もできたし、治療のすえノノウが死に至ったのだとしても、カブトのアイデンティティ崩壊になんら影響をもたらさない。だってノノウの舞台上での役目は、「わたしはあなたを覚えていない、知らない」と言い切ったところで終わっているから。それを、カブトにノノウを見捨てさせるっていうのがスゲーな……ってなった。
あれはまさにアイデンティティモンスターカブトにとってノノウが用済みになった瞬間なので、見捨てて当然なんだね。カブトにとってノノウはマザーで、親で、自分のことを絶対に忘れずにいてくれる存在だった、でも彼女はカブトを知らないと言った。ノノウはカブトのアイデンティティを証してくれる存在ではなくなったから、必死に治療する意味もない。死んだってかまわない。また、親に拒絶された子どもの反応としても正しい。もう少しカブトが幼かったら、もしカブトがスパイとして精神をすり減らしていなかったら、もっと縋り付くような展開もあったかもしれないけど、カブトはもう親の手を借りずに生きられる程度には大人で、自分が支えにしてきたものをぶち壊したノノウの言葉を許容できるほどの余裕がなかった。いいですね~! こういう地獄! 好きですよ!
そしてね、まあこれは作劇上の都合ということもあるんでしょうが、カブトはだれも恨まないんですね。ノノウと自分を殺そうとしたダンゾウのこと? どうでもいい。すべて知っていたのに教えなかった大蛇丸のこと? 新しくあらわれて自分にアイデンティティをくれる「親」。その大蛇丸を殺したサスケ? 大蛇丸様がいなくなったから、また自分を作らなきゃ。こういう具合。復讐とか誰かを憎む恨むといった感情を抱くだけの素地がカブトにはない。まあ頭はいいので、復讐を遂げたところでなにも得られないということがわかっているのでしょう。
こうやってねえ、自分だけのために動く究極的に自己中なキャラクターってNARUTOではカブトぐらいのもんなんだよな。ほかのキャラはなんだかんだだれかのためであったり、いちおうはみんなのしあわせを想って世界を変えたいと思っていたりするわけだけど、まあそのせいでやっかいなことになったりもするけど、自分のことだけじゃないんだよ。でもカブトは自分のことだけなんだよな。おまえとカグヤくらいだよここまで自分のことしか考えてないの。すごいよ。それなのに最終的に何万人も死ぬ原因になった戦争を引き起こした罪が許されて孤児院の院長やってるのどういうことなの? オビトもマダラも死んで(マダラはもともと死んでたけど)カグヤも封印されたのになんでおまえは自由を満喫しているんだよ。しかも外伝では万華鏡写輪眼もちの群れを手に入れてしまって。おまえのことは好きだけどそのへんの理屈ぜんぜん思いつかねえよ。