ヒャクノスケヤマネコの呪いと祝福について。
思うんですけど、ヒャクノスケヤマネコはすでに祝福されているんだよね、たぐいまれな鋭い視力を父母の遺伝子によって授けられ、それをいかすための自己が幼少から研鑽し続けた銃の腕もある。ただそれはある意味では呪いでもある。ヒャクノスケヤマネコは視力と銃の腕がゆえに、狙撃手という立ち位置を捨てられないわけ。人間、得意なものは捨てられない。それにヒャクノスケヤマネコにはそれしかない。鶴見中尉に引き入れられたのも、土方にやとわれたのも、アシㇼパに気を許されたのも、銃の腕があるがゆえだとヒャクノスケヤマネコは思っていると思う。鶴見中尉と土方はともかく、アシㇼパはヒャクノスケヤマネコが銃の達人でなくても受け入れてくれたと思うけれども、でも、作中でヒャクノスケヤマネコはヤマシギを撃ち、シカを撃ち、トドを撃ってアシㇼパとコミュニケーションをかさねてきているので。
谷垣に「銃を離すな」と言っていて、自分でもそうしているのは軍の教えもあるんだろうけど、ヒャクノスケヤマネコが銃を捨てられない人間だということをしめしているのかもしれない。
で、そのヒャクノスケヤマネコの祝福と呪いをささえる目も銃も今回失われたわけで、これからヒャクノスケヤマネコが、それこそ「ただのヒャクノスケヤマネコ」としてどう生きていくのかというのが注目されるね。これからもアシㇼパたちと行動をともにしていくんだろうけれども、アマッポで射られて救われ、すこしずつ兵士の谷垣からマタギの谷垣、ただの谷垣へもどっていったげんじろちゃんとヒャクノスケヤマネコはわけがちがう。ヒャクノスケヤマネコはここからあらたな自分を見つけ出さなければならない。ただのヒャクノスケヤマネコとして、母を、父を、愛してくれようとした弟を殺してしまった自分と向き合わなければならない。
さてここからふざけた感想に突入するけど、すごいね、先週は勇尾勇の民大勝利やんとか言っていたのに、今週になったら尾杉尾の民が大勝利している。これはサㇰソモアイエㇷ゚(どこが小文字か忘れた……)のときのシライシだね。杉元が「歯茎とかに毒が入ったらいやだから」って言ってたら死んでたね。まあ杉元はシライシのときも死にはしないって聞いたから吸ってやらなかったのであって、死ぬってことだったら吸ってやっただろうからね。それに杉元はスルクを舌にのせたこともあったっけ……なにもかもなつかしい。
そして小便大活躍。月島軍曹は小便っていうけど、杉元はおしっこっていう。まあ小便は膀胱とかの病気にかかっていないかぎり無菌だから清潔。かけられたくないけど。しかし、小便を早くぬぐわないとみんな凍傷だし、シライシはちんぽが危険だ。今後、二次創作で小便かけがあった場合、「原作程度の放尿描写あり」って表記されるのかな。
あと、杉元に毒を吸い出してもらっているヒャクノスケヤマネコが白目むいてるの、たぶん矢が目に刺さってショック(医学的な)で気絶しかかってるんだと思うんだけれども、めちゃめちゃいやがってるようにも見えて笑える。「うわ~高潔ムーブ来ました~」みたいな。そしてアシㇼパと杉元の再会と小便祭りのあいだ氷上に放置されているのもまたをかし。
そしてマキリを刺されたキロランケと、対立寸前だった鯉登少尉・月島軍曹はいったいどうなっているのだろう。これでアシㇼパとシライシを確保したから、引き返すことになるのかなあ。ただ杉元は鶴見中尉を裏切りそうだなとは思っているんだよね。裏切りがきらいなひとだからおまえが裏切るのかよって感じはあるけど、「200円くれ」っていうのが引っかかってて。あれがアシㇼパに最後までついていくことはしませんよっていう対中尉アピールだったんなら、裏切りもありなのかなあと思ったりする。
アシㇼパと合流したいま、中尉側の人間が全員そばにいないのも気になる。谷垣もある意味中尉側でしょう、べつに対立してたもとを分かったというわけではないのだし、死者に報いるという信念には共鳴しているわけだし、インカㇻマッは中尉のもとにいるわけだしね。このあたりで先遣隊のそれぞれのズレというか、目的のちがい、考えかたのちがいなんかの差異が致命的に露呈しそうな気がする。鯉登少尉と月島軍曹はあからさまに樺太に入ってからかみ合ってないしね。いやずっとかみ合ってないけど、ふたりが絶対的に服従する鶴見中尉がいるとかみ合ってなさがマスキングされてたからね。
どうでもいいけどわたしはキャラ同士が仲悪かったり相性悪かったりするの好き。ケンカップルとかいう生易しいものではなく、単に合わないっていうのが。なので鯉登がまえにヒャクノスケヤマネコのこと大嫌いって言ったの最高だったな。好きになるのに理由はいらないけど、嫌いになるのにはなにかしら理由があるし、だれでもそこに自分を正当化しようとして理屈をこねるでしょ。そういう理屈付けが、じっさいにはただの屁理屈だったとしても、そのひとの人間性が出ると思ってて、好き。だから嫌いなキャラについての心象をきくのも大好き。話がそれたけれどもこれで終わり。